*味醂仕込みのいろいろ

*第1の味醂

米糀を作るようになって、様々な調味料を仕込み始め、

次は味醂という調味料を作ることができるのか?

と考え調べ始めた。

ネットで調べていると、だいたい出てくる仕込み方が、

蒸した餅米に米糀をあわせ、そこに米焼酎を注ぎ、

1年ほど寝かせるというものだった。

その通りに作ってみたら、1年後にはきれいな琥珀色に変化し、

どうやら完成したようだった。

↑仕込んですぐの味醂

ただ、味醂という調味料を飲んでみたことがなかったから、

比べてみようと思いなめてみた。

当時の私は調味料にあまりお金をかけるということをしていなかったので、うちの台所には「みりん風調味料」しかなかった。

市販の味醂風調味料はとても甘く、「甘ったるい」という感じだった。

原材料を見ると、ブドウ糖が入っている。味醂ではなく、単にあまくした調味料だったのだ。

私が作った方の味醂を舐めてみると甘みは少なく、すっきりしており、

美味しいけれど甘みの調味料としてこれでいいのかは分からなかった。

けれど料理に使ってみると、特に問題なく使えたので、これで良しとした。

↑仕込んで1年ほど経った味醂

第1の味醂の作り方

①餅米6合を前日の晩から浸水させておき、当日水切り1~2時間行なう。

②餅米を蒸す。芯が残らないよう硬めに蒸す。うちの餅米は15分程で蒸しあがる。

③蒸した餅米を飯台に広げ、団扇で仰いで蒸気を飛ばし、荒熱を取ったら、米糀600gと合わせ保存容器に入れる。

④そこへ米焼酎1800ccを注ぎ、半年から1年寝かせる。

⑤琥珀色になったら出来上がり。ざると晒しを使って濾す。

液体の澱が沈んだら、上澄みを容器に入れ替える。

⑥2%の塩を入れる。

ただしこれは米糀による発酵ではない。

米糀菌が出した「でんぷん分解酵素」によって、米のでんぷんが糖に分解され甘くなるのだ。

米焼酎ほアルコール度数が25パーセントあり、これを注ぐと同時に麹菌は死滅しているのだ。

*第2の味醂どりんちゃん

2年目、同じ作り方で味醂を仕込むのだが、米焼酎を買わなければいけない事が気に入らなかった。

餅米はある。米糀も作れる。けれど米焼酎はさすがに作ることができない。

焼酎の造り方、という本は買ってみたけれど、蒸留する装置を作らなければいけない。

何とかならないか、と濁酒作りを教えてくれた友人に尋ねた。

彼は教えてくれた。

「味醂とは、もともと調味料ではなく、江戸時代の女性が飲んでいたお酒で、つまり、甘く作った濁酒だったんだ」と。

「だから、濁酒の蒸し米をうるち米ではなく、餅米にして仕込むんだ。」

なんだ、そうだったのか、簡単じゃないか。

さっそくやってみた。

甘い濁酒ができた。美味しかった。

だから全部飲んでしまった・・。

あかんやんか、ちゃんと置いといて調味料にしなければ・・。

去年の反省もあって、今年は多めに仕込み、

飲んでしまわないように調味料の分は押入れの見えないところに仕舞い込んだ。

去年、どりんちゃんを仕込みたいという友人がうちで仕込んだものの、

「なんか白いものが浮いてんねん・・」

と怖くて飲めず放置しているという写真を見せてくれたものが、

きれいな琥珀色に変化していた。

なんと、1年ほど放置しておいたらちゃんと琥珀色になるようだ。

浮いている白いものは米粒だと思われ、腐敗や虫ではなさそうだ。

怖がって飲まずに、私の代わりに1年置いといてくれたのかと思った。

この濁酒味醂を「どりんちゃん」と濁酒好きの友人が命名してくれた。

どりんちゃんを漉してから置いといたもの。すでに色が変化してきている。

けれどよく考えれば、このドリンちゃんは糖化酵素による糖化ではなく、酵母によるアルコール発酵である。

酵母菌は、米の糖分を食べてアルコールをつくりだすので、

1年も置いておくと糖分を食べつくし、全く甘みのないお酒になった。

甘いお酒としてはいいけれど、味醂としての役目は果たしてくれそうになかった。

まったく残念なことである・・。

*第3の味醂 甘酒味醂

今年、米糀や米焼酎版味醂仕込みに見学に来られた移住者仲間の

爺が、また新たな味醂の仕込み方を提案してくれた。

爺の友人が味醂を作っている蔵で働いていて、その人から教えてもらった作り方だった。

爺が聞いた作り方とは、

「米糀と炊いた餅米を保温して糖化させたところで米焼酎を注ぐ」

というものだった。

なるほど、そうすれば甘みが増すだろう。

第1の味醂の仕込みでは甘みがすっきりしていて美味しかったが、市販の味醂に比べると甘みが足りない。

仕込む前に糖化させておくことで(甘酒にしておくということ)、もっと甘い味醂になるであろう事は想像できる。

分量の配分など細かいことは分からないので、かなり適当であるがさっそく仕込んでみた。

漉す間がなくて、1年以上放置された甘酒味醂は

しっかり琥珀色に変化し、第1の味醂よりも甘い味醂に変化していた。

三河の九重味醂の本味醂と味比べをすると、まだまだ甘さは足りないが、

自前の味醂としては上等ではないか。

結果、やっぱり米焼酎は買わなければいけないけれど、一応これで満足した。

ちなみに三河の九重味醂(ここのえみりん)は500mlで千円ほどで購入できる。

江戸時代の女性が飲んでいた甘いお酒の味醂酎も復刻されて購入できる。

自分で仕込むよりも安くて美味しいし、

原材料も国産餅米、国産米糀、焼酎とシンプルな材料で、あれだけの甘さが出せるとは、やっぱり日本人は凄いなぁ~と関心させられるのだった。